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赤い月(上・下巻)(なかにし礼・文春文庫)★★★★

「ワイルドスワン」「流れる星は生きている」
と来て
次に読んだのが、この「赤い月」。


赤い月(クリック)
どの本もみんな
中国(満州)に関係ある。

どれもみんな
ノンフィクションに近い。


3冊の中で
どの登場人物も、今の私には
想像できないほどの
悲惨な体験をしている。

この「赤い月」は
何年か前の夏
テレビで見て鮮烈に心に残っていた。

高島礼子の美しさと演技に見とれて
中村獅童の魅力に
惹きつけられたのを今でも覚えている。
(今、中村獅童さんはナニカト世間をお騒がせしてるようですが)

なかにし礼のお母さんが
モデルになっていると思われる。

「流れる星は生きている」もそうだったが
「母は強し」と思わされた。

自分の子どもの命を守るためには
道徳とか人道的とかそう言うことを一切捨ててしまえるのは
良い悪いは別として
実に実に逞しい。

しかし、悪く言えば利己的なのだ。

極限状況では
利己的になりうる者
図太い者
生きる意志の強固な者だけが
生きぬいていけるんだなと思った。

それを責める資格は私にはない。

そう言う状況を作ってしまう戦争の恐ろしさを思う。

それにしても
この本の中に登場人物の軍人「氷室」のセリフに

国家だけが一人化け物になるわけではない。
国民も一緒になって小さな化け物になっていくのだ。

自らの意志によってか、
恐怖に強いられてか、
いずれにしても国民のほとんどが理性を捨てて、
小化け物となっていくのだ。

それが愛国心のからくりだ。

俺は、自らの意志によって理性を捨て、
小化け物となり、化け物の手先となって働いた口だが、
あげくにこうして良心の呵責に苦しんでいる。」


と言う一節があった。

夢を持って満州にやってきた日本人達。

そこでどれだけ中国の人達に対して傲慢な態度だったのか。

満州の開拓に夢を持って酒店を開いた波子だったのに
実は、そこで支えてくれた共和物産は
敵国味方国関係なく武器の材料を売ったり
表面でアヘンを禁止しておきながら
実際には中国人に大量に密売していたりした。

挙げ句の果てに
終戦後ソ連が満州に責めてきた時
日本の国家は
満州にいる日本人達を見捨てた。

大変な苦労をしてようやく引き揚げ船に乗った時
誰からともなく
「満州のバカヤロー!」
と言う声が上がったという。

世界史も日本史も苦手でちゃんと勉強していなかった私なので
ああ、そういう事情だったんだ

と、恥ずかしいことに
今頃初めて知ることも多くあった。

岸伸介は満州国を牛耳った官僚だったことも恥ずかしながら私は
初めて知った。(*^_^*)

その孫が現総理の某お方なんだよな~・・・と思うと
つくづく、今の日本の危うさを感じる。

膨大な量の資料を読み
事実を書くようにしたというなかにし礼。

「北酒場」など作詞家として知っていたが
小説もうまいなと思った。

今度は「長崎ぶらぶら節」とか「兄弟」を読んでみたくなった。
by nanaco-bookworm | 2006-11-19 00:09 | な行 | Trackback | Comments(0)

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